うた、が、

きこえる。

金色の海を漂っている。

金色の光に満ちたそこは、まるで夕陽を受けて輝く海のようだったし、朝焼けの雲の中のようだった。

熱くもなければ、寒くもない。苦しくもないそこで眠っている。上も下もないそこでたゆたっている。

腕と体の間を、脚の間を、穏やかな風が通り過ぎて俺の短い髪も揺れる。

その時また、遠くから歌が響いて来た。

……ああ、これは《   》だ。

思い出せない。

とても大切な歌。

帰らないと。約束をしたんだから。還すんだって。

近くになったり遠くなったり、海の中で聞いているような。

高く低く、伸びやかなその声に、次第にはっきりと何かを考えることが出来るようになる。

この声は彼女の声じゃない。 (彼女って、誰だったっけ)

 この声は、お前なのか。お前が歌ってるのか?

――ローレライ。 (そうだ、ここは第七音素に満ちている――第七音素ってなんだ?)

胸に熱く響く歌は、じんとした振動を伴って『俺』と意識するものに沁みていって、それが繰り返されるうちに俺は色んなことを感じて理解出来るようになる。

ローレライでもない。

これは、俺が歌ってるのか? (俺、って――?)

ああ、ちがう。

俺が歌ってるんじゃない。

どこかで、俺に似た声が歌ってるんだ。

そう思った時、ふと、ひらひらと、光の中で何かが揺れているのに気がついた。

それが小さな手だということを認識した瞬間、その手の先の小さな体の全身が、そして赤い髪が目に入る。

それが誰なのか判らないけれど、とても大切なものだということは忘れてない。

なんでこんなところにあるんだろう。

とても大切に守ってたのに。

俺と同じように、赤い髪を持った小さな体は光の中を漂っている。

だらりと投げ出された手を見て、焦った。

俺は、あの手をずっと握ってなきゃいけなかった、気が、する。

いつの間に俺は手を離してしまったんだ。

なんでもいい。構わない。ただ、助けないと。

金色の光の中、手を伸ばす。

駆け寄りたいけれど、ここでは脚を動かしても手を動かしても距離は縮まらない。

ただ近くに。

それだけを強く思った。

次第に距離が縮まって、力のない小さなてのひらに指先が触れる。

もうちょっと、と手を伸ばしてその手を掴んだ。

その瞬間、吸い込まれるように子供の方へ引き寄せられる。

何が、とか思っている暇はない。

今までその子供は身動き一つしなかったのに、俺を引き寄せる力があるのか。

驚きながらそう見詰めるしか出来ない。このままじゃぶつかる。

慌てて体を反らそうとするけれど、どうしてか引き寄せる力に抗えない。

どんどんと近くなる子供が、赤い髪に覆われてよく見えなかった顔を上げる。

表情のない、人形のような瞳――

その瞳から逸らせないまま見入る。

無表情なのに、握る手の、引き寄せる力が強くてぞっとした。

避けられずに俺とその子供がぶつかる瞬間、その顔が。

『俺』だと気がついた。

* * *

ケセドニアの砂塵の中青い軍服の上着に両手を突っ込んで、地面を眺めていた赤い瞳を眇めた後、ふむ、と一度頷いた。その際に肩から蜂蜜色をした髪がさらりと落ちる。

自治区であるケセドニアの、僅かにマルクト側であったことからこの事件について調べるために、首都のグランコクマから呼び出されたのだ。

この件については、ケセドニアのキムラスカ領事側からの通報が、マルクト領事へとあったのだが。

「ジェイド大佐、お疲れ様です!現在アスター氏の許可の下、現場周辺の聞き込みと、キムラスカ領事館の方への事情聴取を行っております」

「これはまた、凄いですねえ…」

広がる惨状は、ここで激しい戦闘が行われていたことを表している。

検分が数日前に終了し、水で流されても消えない壁や地面に散った血飛沫もさながら、傷ついた周辺の壁や抉られた地面の様子は並大抵の譜術ではこうならないだろう。

上着の中の計測器が音を立てたのに、取り出して視線を移す。

「…僅かながら第七音素の残留が認められる、か…」

残留するほどの高濃度の第七音素など、そんな譜術があっただろうか。いや、一つだけ、簡単に答えを得るとするなら用意されているものがある。

――超振動。

そんな実験を、過去マルクトもそして現在はキムラスカやダアトでも行っているというが、超振動は広範囲に壊滅的被害を起こすもので、こんな風に小規模で被害が済んでいる部分が、その簡単な答えを拒否する。

しかも何も実験器具が用意されていたと思えない、街中で。

まるで、超振動を制御出来ているかのような。

――馬鹿な、そんな第七音素譜術士がどこにいる?

そもそも、単独では起こせるはずがないというのに。

上着へと計測器を戻し眼鏡のフレームを押さえて、首を振る。

ここ最近、オールドラントの様子がおかしいのは、マルクトの観測所の記録的にも明らかだった。

三年ほど前からセフィロト付近で第七音素が不規則に活性化する現象が続いている。だがそれは半年ほどの間落ち着いていた。

そして、その代わりとでもいうような前触れもない、数週間前のコーラル城での、膨大な第七音素反応。

――あの数値を見た時、何があったのか推測が立ってしまった。

それが間違いではないだろうという、確信も。

その数日後、今検分を行っているこの事件がケセドニアで起こり、同日キムラスカの通報からでは、キムラスカの要人が誘拐されそうになり、その護衛が囮となってこの場所で賊と戦闘を行った、とのことだ。その護衛はたった独りで譜術の素養はなく、結局戻らなかったと聞く。恐らく死んでしまったのだろうが、はっきりしたことは言えない。

何故なら、ここには死体の一つも残っていなかったからだ。

死体は全て回収していったのだろう。その要人が自分の身を守るために戦ったという場所にも、すぐにキムラスカ兵が駆け付けたが血の跡と戦闘の際に切ったという要人の髪が散らばっていたものの、誰もいなかったというのだ。

何かしらの、組織が絡んでいると見て間違いないだろう。

そのほぼ同時刻で、怪しんでいた件のコーラル城が、墜ちた。

文字通り、コーラル城があった地域一帯がホドのように海より下へと墜ちてしまったのだ。今はそこに大きな穴が空いている。

どうやらカイツールの国境や軍港の話では、コーラル城で膨大な第七音素の反応を観測した2日後から、大きな地響きのような音がして黒い煙が上がっていたと言うが、最終的に爆発のようなものが起きて地盤が崩れたらしい。

その爆発の際にも、第七音素――これは確かに『超振動』と観測結果が出ている。

今では確かめることは出来ないが、コーラル城で、誰かが恐らくレプリカを作っていたのは、あの第七音素の数値的にも間違いないだろう。

その後、何か…突発的な事故があった。そして意図的か、そうでないのか…第七音素譜術士とそのレプリカの間で、擬似超振動が行われて、コーラル城は崩落した。

――そう、推測することは出来るが、その場合そのレプリカは同位体でなければいけない。そんなレプリカは安易には作り出せないはずだ。あくまで推測の域を出ず、真実はどうなのか判らない。

だがレプリカを作るなど…今でもそれを行おうとする最高の技術を持った愚かな人間を、一人だけ、ジェイドはよく知っていた。

あの洟垂れは行方を眩まして久しいが、今度徹底的に捜索して問い詰めた方が良いだろう。

何か良くない予感がする。

ジェイド自身に第六感のようなものはないが、何故か酷くそう感じた。

「大佐、タルタロスより伝言です!」

背後から敬礼した兵士に声を掛けられて、思考の海から戻る。

振り返って促すと、敬礼したまま兵士は続けた。

「タタル渓谷から第七音素の反応を、タルタロスの計器が感知しました。レベル的には超振動ほどはありませんが、今も増加しているようです。いかがなさいますか?」

あそこにはセフィロトがある。

セフィロトに直接接触する訳ではないが、周辺を訪れればここ三年ほど続いている、第七音素の活性化の原因が判るかも知れない。

「…判った、すぐに向かう。私がいなくとも捜査はそのまま各自続けてくれ。一両日には戻る」

「了解しました!」

靴を鳴らして再度敬礼をした兵士がすぐに身を翻す。それとは別の方向、タルタロスを停止させている街の外へと足早に歩き出した。

ケセドニアからそう離れていないものの、ケセドニアを出た時間が午後だった所為か、着いた時には夜になっていたタタル渓谷へ、数人の兵士が運ぶ本格的な計測器を伴って踏み入る。

滝を越えて迫り来る魔物にはジェイド自身が譜術を放つ。兵士達は壊せない計器で手が塞がっているし、この辺りの敵などジェイドにとって一度の詠唱で終わる。

さらさらと流れる水の音と、濃厚な自然の匂いの中、魔物達の鳴き声で包まれたその場所を歩いていた一人の兵士がふと、立ち止まった。

「おい、どうした?」

「いや、なんか…声、が……」

「おいおい、気持ちの悪いこと言うなよ!」

この魔物が溢れる渓谷に人が住んでいるとは聞かない上に、今は夜だ。そこに『人の声が』などと言われれば嫌な想像の一つもする。

だが、一番最初に足を止めた兵士は首を振って否定した。

「違うって!そんなんじゃないぜ、これ……なんだ、歌、か?」

そう言われて、今度は全員が足を止めて耳を澄ませる。

ジェイドは兵士達の様子を黙って眺めていたが、そのジェイドの耳にも微かな高い声音が届いた。

――……エ レィ…………ア ………… トゥエ……

その歌声は、渓谷の奥の方海へと突き出している、少し開けた場所の方から聞こえるようだった。

ジェイドは眼鏡のフレームを押さえる仕草をした後、にこりと笑って。

「では、そちらへ行ってみますか」

そう告げると兵士たちを置いてすたすたと歩き出す。

「ええっ、待って下さい大佐!」

「本当に行くんですか!?」

「本当も何も、仕事でしょう。はい、きりきり働く」

ジェイドの言葉に騒いでいた兵士も口をつぐみ、覚悟を決めたように計器を持つ手に力を込めて歩き出す。

壊さないと良いんですけどねえ、とその様子を眺めながらジェイドは足を進めた。

眩いほどの、真白い光を放ちながら月が海とこの花畑を照らしている。

広がる夜の空に響く海の音は、淡く、月の光を反射するように光を灯して咲く、風に揺らされるセレニアの花たちが立てる音にも酷似して聞こえる。

その花の海の向こう、岩の上に背を向けて座る白い服を着た小さな子供から、歌声が放たれているようだった。

幻想的な世界を前に、兵士達は足が竦んで動けない。

少年の、月の光でも彩を失わない、赤い髪。

その色にジェイドは目を細める。まだその瞳の色は確認していないが、ここまで鮮やかな赤い髪はそう、いない。

自動的に頭の中から関係する資料が引き出される。

赤い髪と緑の目は、キムラスカ王族を示し優先的な王位継承権を持つという。

その時ジェイドの上着の中で、携帯していた計測器が音を立てた。

どうやら迂闊なことに、スイッチが入ったままだったらしい。まだ続けて音を立てる計器を取り出そうと上着を探る。

その計器の音がさすがに聞こえたのだろう、その子供はこちらをゆっくりと振り返った。

そうして小さな、だがはっきりとした透き通る子供らしい声で。

「……ジェイド?」

そう、ジェイドの顔を正面から見詰めて、言った。

何故、この子供が自分の名前を知っている?

疑わしいものに対しては捕らえて尋問するのが通常だが、けれどその子供のまっすぐとして透き通った翠の瞳から、目が逸らせない。

計器の音は鳴り続けている。

この計測器で出来るのは、この場に満ちる音素の種類と数値を表示することと、そして対象物が人であった場合に自動的に行われる振動数の計測。その振動数の数値の表示が終わらないのだ。

計器が故障したかと確認すれば、その画面に表示された数値に目を瞠る。

――3.14159265358979323846…………・

「これは…っ!」

ローレライと同じ振動数。

そんな人間はもちろん、存在しない。

では、今目の前にいるこの赤い髪の少年は、……まさか、今まで観測されなかった、意識集合体なのか。

ああ、だからこそ、こんな幻想的な空気を壊すことなく存在出来るのかとジェイドは思う。

平凡なただの人間では、立ち竦んでしまうような。

その世界を壊すように、ある意味ただのヒトの世界へと堕とすように。

一歩、また一歩と少年へ歩みを進める。

そして少年から後一歩、というところで立ち止まり声を掛けた。

「……私は確かに、ジェイドと言いますが。あなたは…ローレライ、ですか?」

ジェイドの言葉に、彼は首を少し傾げてみせる。

そこでようやく、人間らしさが表に出た。

ゆっくりと瞬いたその瞳は逸らされることなく、ジェイドと見つめ合って。

「俺は――、」

* * *

「閣下、予定通りカンタビレがダアトを離れました。如何致しましょう」

広い執務室の奥、窓の向こうを眺めている広い背中にそう、声を掛けた。

先日ユリアシティで別れた後、腹部を血まみれにしたままダアトに現れた時はさすがに驚いたが、今ではもうなんともない様子で、相変わらず揺らぎなく、力強い印象で立っている。

「そうか。あの女が愚かにもティアに何か吹き込んだようだな。このままでも別に計画に支障はないが、面倒な時に考えなしにしゃしゃり出てこられても困る。――処分しろ」

「了解しました。カンタビレの死によって導師派の台頭として担ぎ上げようとしていたものたちが、少し煩く騒ぐかと思われます。閣下の周辺にも影響があるかと思われますが、その場合はどうなされますか?」

「そうだな…」

そう答えた後、彼は低く笑う。

「……? 何か、面白いことがございましたか?」

「ディストが世話をしている出来損ないがいたな。アレにカンタビレのフリをさせろ。『カンタビレ』がロニールに居る、と思わせておけば、騒ぐものはおるまい。もし居たとしても、レプリカ情報を抜いてしまえばいい」

「はっ」

出来損ないというのは、ルーク・フォン・ファブレのレプリカだ。

レプリカ故に劣化しているところを指して、閣下は『出来損ない』と呼ぶ。

作られた当時、コーラル城でオリジナルルークの脱出と共に突発的な事故が起こり、上手い具合に同位体となったものの、急激に音素が不足した時間が長引いたせいかレプリカは自我を持つことが出来なかった――生きているだけの屍となったと、リグレットは聞いている。

もちろんそのままでは超振動すら使えないため、残念ながら破棄して再構成することが決定したその夜、超振動が起こりコーラル城は崩落した。

恐らく自我を持たないレプリカがどのようにかは判らないが、超振動を起こしたのだろう。

だが、コーラル城と共に死んだと思われていた。

その一年後、こともあろうかディストが、完全同位体のレプリカルークを連れて帰ってきたのだ。

コーラル城が崩落してオリジナルルークのレプリカ情報は失われているはずだというのに、どうやってレプリカルークを作れたのか。

ディストは研究上の機密だと言って口を割らなかったが、こちらもオリジナルルークの誘拐がたった一人の、ファブレ家の使用人ごときに失敗した後では、超振動が使えるレプリカがいるだけで特には構わなかった。

ディストはこれからの計画にも大きな部分を占めている存在だ。下手に臍を曲げられても困る。

一年前に出来ていたレプリカとは違って、自我もあり普通の健康体と変わらないそのレプリカルークは、閣下が口を開く前に、こう告げたという。

『俺、ちゃんと、ルークの…オリジナルの代わりに、アクゼリュスに行きますから』

ディストは秘預言など興味がない。だからディストが教えるはずがない。けれどそのレプリカルークは秘預言に関わることや閣下の思惑に関わることまで口にし、もちろんそれを閣下は許さなかった。

その後レプリカルークは、地下の奥深くにほぼ幽閉のように監禁されたが、それもすぐにディストが自分の研究室へと移動させ、最終的にアリエッタや、シンクの世話をするために自由に施設や街を動き回るようになり、閣下の居ないところでは秘預言のことなどを一切口にしなかったのもあって、短い生なのだから好きにさせてやれとラルゴまで口を出す始末で、一体何事だとも思ったが。

「髪を切って同じ色に染めさせ、顔は仮面で隠せばよかろう。制服は任せる。約束の時まで、実際にロニールで働いて貰うとするか」

「了解しました」

頭を下げた先で彼の立ち去る足音が遠ざかり、リグレットの背後にある扉とは正反対に位置する扉が開き、閉まる音がした。

ロニール雪山一帯の魔物たちはオールドラントの中でも強いと聞く。どれほどの数が生き残れるだろう。レプリカルークには超振動があるが、兵士達はほぼ全滅と考えていいか、とため息を吐く。

モースと閣下が『カンタビレ』に第一、第二師団よりも多い八千もの兵を与えるはずがない。――あれは半分以上が、生誕預言の際にレプリカ情報を抜かれて死んだ、神託の盾の兵の名前だけなのだ。実質生きて使える兵士は千もいるだろうか。

けれど。

背筋を伸ばし、目の前の窓の向こうの空を見上げる。

どこまでも青い空。まるで汚れを知らぬ色をして、けれど無惨に安易に人を殺すことを何とも思わない、狂った世の中をいつまでも包み続ける。その下を。

生き延びよ、と思う。今の先を、その先を一瞬でも長く生き延びよと。

私たちが与えた教育が、彼を護るだろう。

「リグレット、今からアリエッタとお菓子買いに行くけど…」

背後を慌ただしい足音がしたと同時にノックもなく扉が開く、それに振り返れば。

何か欲しいものとかあるか?と訊いてくる、成長した彼…レプリカルークの姿がある。

外見上はオリジナルルークと同じく、15歳の少年らしいすらりと伸びる手足を持っているが、まだ成長途中に見られる頼りなさのような華奢とも言える部分があった。

首を傾げてこちらを見る彼の翠の瞳は大きくて、頬もまだ丸さがありまだまだ幼さを残している。

喪った弟と重ねてはならないと思いながら、けれど手が掛かれば情が移る。姉とはそういうものなのだ。

突き放していたつもりが、いつの間にかあれこれと口を出し。いつのまにか、自分までもが彼に翻弄されていた。

こちらを覗う様子の彼に近づいて、その頬に手を優しく当てた。

気がつけば身長ばかりが伸びている。少しばかり上の目線にそっと微笑む。

――大きくなったな」

「な、何だよ、いきなり!」

顔を赤くして慌てる彼に背を向け、部屋の奥へと進み備え付けの棚から鋏を取り上げると、その反対の手で椅子を指した。

「来なさい、髪を切ってあげるわ」

髪?と首を傾げる彼の肩から、さらりと音が立つようなしなやかさで朱金に輝く長い髪が落ちる。

夕焼けの彩そのままに、毛先になるほど金色になる、美しいグラデーションを描く髪。

それを切ってしまうのをとても惜しいと感じるのは、自分の中に残る僅かな女らしさか。

不思議そうにこちらを見る彼をまっすぐに見詰めて、告げた。

「あなたは今日から、『カンタビレ』よ」

end.